Interview:インタビュー

脚本“下倉バイオ”×原画“津路参汰”、プロデューサー“でじたろう”Wインタビュー

出典:コンプティーク2月号(2013年1月10日発売)

脚本“下倉バイオ”×原画“津路参汰”対談

ヒロインのどちらを選ぶか迫られる究極の選択

これまでのニトロプラス作品とは少々毛色が違うようですが、どんな内容の作品なのでしょうか?

下倉バイオ:
(以下、下倉)

メインとなるのは「男女の三角関係」です。主人公とヒロイン2人が仲よく学園生活を送っているけど、どちらかとくっつこうとすると、それまでの関係性が崩れてしまう。そんななかで、主人公はどんな未来を選ぶのか……というせつなさを含んだ恋愛ストーリーになります。

本作は「オルタナティブADV」というジャンルだそうですが、これにはどんな意味が?

下倉:

「オルタナティブ」には“二者択一”とか“代わりになるもの”といった意味があります。最終的な選択でヒロインのどちらをとるか、プレイヤーが本気で悩めるような作品ということで、こうしたジャンル名をつけました。「ドラゴンクエスト5」では結婚相手をプレイヤーが選べましたが、プレイヤーによって考え方が大きく違うじゃないですか。「お前、フローラを選ぶなんて人間じゃねえよ!」みたいな(笑)。でも、みんな自分の選択に誇りと自信をもっていますよね。本作でも、そんなふうにどちらのヒロインを選ぶか悩んだ末に、「これでよかったんだ」とプレイヤーに思ってもらえるような作品にしたいんです。

そして気になるのが『君と彼女と彼女の恋。』というタイトルです。これにも、何か深い意味が込められていそうですね。

下倉:

「君と彼女と彼女」の恋なのか、「君と彼女」と「彼女の恋」なのか、いろいろ解釈はあると思いますが、このタイトルは作品をとてもよく象徴しているので、その意味を考えながらプレイしていただけると、「なるほどな」と思っていただけるかと。

津路参汰:
(以下、津路)

毎回、企画の仮タイトルは身もフタもないものになっているんですけど、今回は企画段階からこのタイトルでしたね。

下倉:

そうそう。むしろ、このタイトルから作品の方向性が導かれた部分があるかもしれませんね。

あえてプレーンなイメージでデザイン

キャラクターをデザインする際、どんなことに気を配りましたか?

津路:

ヒロイン2人に共通することですが、あえて特徴的な記号などは入れず、ごくプレーンな印象があるようにデザインすることを心がけました。どちらの女の子を選ぶのかが本作のキモになりますが、それを見た目の印象で決めるのではなく、あくまでも実際にプレイして物語に触れたうえで、悩んでほしいんです。それで、ツンデレな美雪は黒髪ロングのツリ目というテンプレート的なデザインに。いっぽう、アオイはじつはマンガ喫茶で寝泊まりしているというかわいそうな境遇の子なんです。それで、服がよれよれだし、目にハイライトがないしで「何かあったの!?」と心配されるような感じにしています。

津路さんへはデザイン発注時に、下倉さんから細かい指示を出されたのですか?

下倉:

いいえ、こちらからの指示は「黒髪ロングのツンデレ」と「ピンク髪の不思議ちゃん」という程度で、ほとんどおまかせしています。今回は開発期間を多めにいただいているので、津路にじっくりシナリオを読んでもらい、物語内容をキャラクターのデザインにフィードバックするという、ごくまっとうな手順を踏んで進めてもらいました。

津路:

最初の企画案では「私と彼女、どっちをとるのよ〜!?」みたいなポップなコメディ作品だったので、一度はその路線で初期デザイン案を上げたんです。でも、最終的にはすごくしっとりとして物静かな物語になったので、これではいけないと思って再度デザインを起こしました。美雪のほうはやや等身を上げたくらいで基本デザインは変わっていませんが、アオイは共通しているのは髪の色くらいで、表情やら等身やらすべてを一新しましたね。

まるで水彩画のような淡くみずみずしい世界観

本作はまるで水彩画のようなビジュアルも特徴的ですよね。

津路:

そうですね。これまでのニトロプラス作品にはない塗り方をしてもらっています。特に背景の描き方にその特徴があらわれていますね。背景スタッフに「アニメの「放浪息子」みたいな感じにしてほしい」と伝えて、いまのような形に仕上げてもらいました。

下倉:

一口に「純愛ゲーム」といっても、世にあふれる恋愛ゲームとはちょっと毛色が違う作品なので、見た目から「このゲームはひと味違う」ということを匂わせたくて。最初は津路の絵を水彩画風にするとどうなるか、自分も想像が追いつかなかったんですが、実際にやってみたら思いのほか作品イメージにマッチするものになりました。

津路:

塗り方だけでなく、線のタッチや髪の描き方も意識的に変えています。今回はラフスケッチを描くときのように、スッスッと軽く描いた線を何本も重ねているんです。そうすることで、CGではなくまるで手描きの絵画のような仕上がりになるんですよ。髪の毛もアニメのようなパキッとした感じではなく、サラッとした質感を意識しつつ、少女マンガのようなホワイトを飛ばしたりして、これまでのニトロプラスの路線とは別物に見えるようにしました。

下倉:

物語内容もそうですが、ビジュアル面でもかなり挑戦的な作品になっていますね。

ちなみに、本作はアダルト作品ですが、Hシーンの割合は……?

津路:

あくまでも純愛の課程としてHシーンが入ってきますし、物語抜きでは語れないものばかりなので、そう多くはないですね。

下倉:

とはいえ、津路参汰原画の作品でもあるので、Hシーンの割合は高めです。各ヒロイン5回くらいは用意してあるので、ニトロプラス作品としてはひとりあたりの回数は多めかなと(笑)。

では全体的なボリュームはいかがでしょうか?

下倉:

だいたい10〜15時間くらいでしょうか。今回は「世界の危機を救え!」みたいにはなりません(笑)。キャラクターの数は少ないですが、そのぶん人の内面へと向かっていく、狭くて深い恋物語を楽しんでいただければと思います。

プレイできる日が待ち遠しいです。ぜひ、次回があればもっと踏み込んだお話を聞きたくなりました。本日はありがとうございました。

最後にどちらを選ぶべきか本気で悩んでもらえる作品です(下倉)

プロデューサー“でじたろう”インタビュー

ニトロプラス流の「純愛」の定義とは

まずは『ととの。』のテーマについてお聞かせください。

でじたろう:

テーマはズバリ「純愛」です。「純愛」というと、ベタな恋愛物語を想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、この『ととの。』もそうとは限りません。我々が考える「純愛」というのはひたすら愛に向かって突き進んでいくお話であって、その形はさまざまだと思うんです。弊社作品『沙耶の唄』では異形の少女との恋を描いていましたが、それは結果的に人類を滅ぼしかねない、危険なものでした。つまり「純愛」とは、ほかの何に代えても自分たちの愛を貫くことだと思うんです。

なるほど。『ととの。』も一筋縄ではいかない作品のようですね。

でじたろう:

やっぱり作品をつくる以上、本質を突き詰めたくなるんですよね。「愛とは何か?」というふうに。『ととの。』で描きたいのは、僕らなりの定義で突き詰めた、ニトロプラス流の愛の形なんです。

『ととの。』にこめられたいくつもの“挑戦”

では、本作の注目すべきポイントはどこになるでしょうか?

でじたろう:

やはり、ヒロインが2人しか登場しないところでしょうか。美少女ゲームというと、登場ヒロインの数が何人以上いて……みたいなフォーマットが決まっているじゃないですか。でも、僕は作品のおもしろさは人数で決まるわけではないと思うんです。ヒロインは少ないですが、人数を絞ったぶん内容が深く、濃い物語になっていると思います。シナリオを手がける下倉バイオの筆も、ノリにノッています。『スマガ』には“ループ作品”ならではの手法が盛り込まれていましたし、『アザナエル』ではいくつもの事件が平行して起こるさまを、システムとして昇華していました。そのどちらも小説では表現できない、ゲームというメディアならではの魅力です。その下倉が純愛をつきつめるとどうなるか? というところを楽しみにしていただければと思います。

ビジュアル面も、これまでのニトロプラスにないカラーですよね。

でじたろう:

これまではリアリティ重視で3Dを多用したり、実写の写真を加工して使ったりして、作品に“説得力”をもたせていました。今回はそれとは真逆の方向で、水彩画風の着色にして味わいを重視しています。いわば少女マンガ風のビジュアルにすることで、『ととの。』ならではの繊細な空気感を出すことができました。そして、その色づかいと津路参汰の絵が意外とマッチするんです。“すーぱーそに子”を描くようになってから彼の絵はどんどん魅力的になっています。わかりやすい記号を残しつつも、どこかにリアリティと「説得力」を感じさせるロジカルさがあります。しかし『ととの。』ではよい意味で力の抜けた自然なキャラ表現がなされていて、新しいアプローチでの存在感が表現できていると思います。

ちなみに、本作はメディアにDVDではなく、USBメモリを起用したところも変わっていますよね。

でじたろう:

それには理由がありまして、まずパッケージのアイディアから入ったんです。作品の世界観をパッケージから感じていただけるよう、デザインを工夫できないか?と考えたとき、今回、作品内でキーアイテムとして登場するスマートフォンが浮かびました。僕はiPhoneが好きで新機種が出るたびに購入するほどなんですが、あの箱を開けるときのワクワク感をゲームでもやってみたい、というのが発想の出発点なんです。でも、そうなるとコンパクトな小さな箱にDVDは入りません。そこで、箱に入るサイズのメディアということでUSBメモリを選択したんです。USBの値段はDVDの10倍くらいするうえに、箱もかなりコストがかさみます。それでも、一度「やってみたい!」と思ってしまった気持ちは止められません。いつも新しいことにチャレンジするときは、リスクはつきものですしね。

では、最後に読者へメッセージをお願いします。

でじたろう:

2012年末に新社屋に引っ越しをしましたし、僕も『ととの。』でプロデューサーとして久しぶりに現場に戻るなど、いろいろな意味で「再始動」した年でした。今後もこれまで以上に、さまざまな分野に挑戦していきたいと思います。みなさんもチャレンジ精神をもって、ニトロプラスの作品に触れて、見識を広げてみてください。

『ととの。』で描きたいのはニトロプラス流の愛の形です(でじたろう)

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